海外文学

『火の記憶 (1) 誕生』

著者名:エドゥアルド・ガレアーノ 飯島みどり・訳 出版社:みすず書房 発行年:2000年 先日は北朝鮮戦が大変盛り上がりましたね。 ということで、スタジアムの神と悪魔―サッカー外伝でもどうでしょうか?そして、その著者であるガレアーノが描くラテンアメ…

『あなたの人生の物語』

著者 :テッド・チャン 朝倉久志・訳 出版社:早川書房 発行年:2003 価格 :987円表題作を含む八編を納めた短編集。 多少難解で読みづらいところはあるものの、いづれもSF的な想像力に満ちた傑作である。 物語的なエンジンは弱く登場人物の魅力にも欠ける…

『闘争領域の拡大』

著者名:ミシェル・ウエルベック 中村佳子・訳 発行者:角川書店 発行年:2004年10月 原著:1994 価格 :1800円<あらすじ> 「僕」は三十歳になったばかりの中堅プログラマー。社会的地位は申し分ないが、恋愛面では魅力に欠け、恋人と別れてから二年間その…

『甘美なる来世へ』

著者 :T.R.ピアソン 柴田元幸・訳 出版社:みすず書房 発行年:2003年 価格 :2800円 ノースキャロライナの架空の田舎町ニーリーを舞台に、貧しく教育もない民衆が繰り広げる群像劇といったところだろうか。一応ベントン・リンチが恋人との出会いにより強盗…

サトラップの息子

著者名:アンリ・トロワイヤ 出版社:草思社 発行年:2004年 価格 :1600円 <あらすじ> レフ・タラソフ少年は、ロシア革命により家族とともにフランスへ亡命する。その途上で友人となったニキータという年上の少年とフランスで再会したレフは、『サトラッ…

閉ざされた城の中で語る英吉利人

著者 :ピエール・モリオン 生田耕作・訳 発行年:2003年 出版社:中公文庫 価格 :533円 先日、栃木かどこかの男が小学生少女を殺して逮捕されたそうです。 まあ、その事件そのものは「かわいそうに」と無責任な感想を抱いて終わる程度のものなのですが、犯…

サラマンダー 無限の書

著者 :トマス・ウォートン 宇佐川晶子・訳 発行年:2003年 出版社:早川書房 価格 :2400円 <あらすじ> 18世紀末、四六時中変化しつづける機械仕掛けの城に住むスロヴァキアの伯爵オストロフは、無限に続く終わりのない本の製作をロンドンの印刷職人ニコ…

サド侯爵の幻の手紙 至高存在に抗するサド

著者名:フィリップ・ソレルス 鈴木創士・訳 発行年:1999年 出版社:せりか書房 価格 :2000円 前半はソレルスによるサド論、後半はサドによる「架空の手紙」という構成をとる。 だが、前半のサド論は先行するサド論において描かれるサドのイメージの範囲に…

蟹の横歩き ヴィルヘルム・グストロフ号事件

著者名:ギュンター・グラス 発行年:2003年 出版社:集英社 価格 :2100円 <あらすじ> ダヴォスでユダヤ人青年に暗殺されたナチスの地域指導者ヴィルヘルム・グストルフ。彼の名をつけられたkdf船団の豪華客船グストロフ号もまた、大戦末期に東プロシアか…

プラットフォーム

ミシェル・ウエルベック:著 中村佳子:訳 角川書店 2002年9月 P.360 1800円 <あらすじ>四十代の独身男である主人公は、文化省勤めとはいうものの会計管理が中心である仕事にも興味が持てず、取り立てて熱中するほどの趣味も無く、特定の恋人もいないた…

コレクター蒐集

ティボール・フィッシャー:著 野口百合子:訳 東京創元社 2003年4月発行 1500円 人格と変身能力を持つ「陶器」の視点から叙述された、女性鑑定家の真実の愛の探求の物語・・・って自分で骨子を書いててそれだけでイヤになってきた(苦笑 まあ、いいいや。。…

宮殿泥棒

イーサン・ケイニン:著 柴田元幸:訳 文春文庫 2003年3月 686円 307P 「会計士」「バートルシャーグとセレレム」「傷心の街」「宮殿泥棒」の四編からなる短編集。訳者によれば、いずれも枠から飛び出せない<優等生>の物語であるということだが、それは人…

第四の手

ジョン・アーヴィング:著 小川高義:訳 新潮社 2002年7月発行 2200円 395P <あらすじ> 女にだらしないB級ネタ専門のTVリポーター、パトリックは取材中にライオンから腕を食い千切られ、それがTVで流されることによって有名人になってしまう。やがて…

『願望機』

著者 :アルカージイ&ボリス・ストルガツキイ 深見弾・訳 出版社:群像社 発行年:1989 価格 :1500円 ストルガツキイ兄弟の小説『路傍のピクニック』(邦題は『ストーカー』早川書房 1983)の第四章をもとにしたタルコフスキーの映画『ストーカー』(1979…

『少年時代』

著者 :J.M.クッツェー くぼたのぞみ訳 出版社:みすず書房 発行年:1999 価格 :2600円 <あらすじ> ケープタウンの豪邸で暮らしていた10歳の主人公は、父親が政権交代に伴って公務員の職を失ったため、ヴースターという田舎町の団地へ転居する。 英語…

さかしま

J.K.ユイスマンス:著 澁澤龍彦:訳 河出文庫 2002年7月発行 1100円 <あらすじ> 特記するほどのあらすじはなし(笑 あらゆる快楽を享受した後に、あらゆるものに倦んでしまい、田舎の館に引篭もり己の認める芸術のみに囲まれて暮らす貴族の末裔デ・ゼッサ…

『マーティン・ドレスラーの夢』

著者 :スティーブン・ミルハウザー 柴田元幸・訳 出版社:白水社 発行年:2002年7月 <あらすじ> 19世紀の半ば、葉巻屋の息子マーティンはホテルマンとして出世していき、やがては自らもホテルのオーナーとなる。彼は内なる欲求に従い、より大きなホテルの…

『恥辱』

著者 :J.M.クッツェー 鴻巣友季子・訳 出版社:早川書房 発行年:2000年11月 <あらすじ> ケープタウンの大学で英文学の教授をしている主人公は初老を迎えつつあっても性的なものに執着することをやめられない。彼はある女生徒に目をつけ関係を結ぶが、予…

『e.』

著者 :マット・ボーモント 部谷真奈実・訳 出版社:小学館 発行年:2002年2月 会社内で遣り取りされる「Eメールの文面のみ」によって描かれた広告代理店の日常。ことごとく頭のよろしくない登場人物たちが大企業のコンペを巡って右往左往する様が描かれて…

『死ぬほどいい女』

著者 :ジム・トンプスン 三川基好・訳 出版社:扶桑社 発行年:2002年3月 <あらすじ> 訪問販売人フランク・ディロンは、代金を踏み倒した客についての聞き込みをしに寄った家で老婆に買春を強要されている少女モナに出会い心惹かれる。彼はモナを救い出す…

『月』

著者 :アマール・アブダルハミード 日向るみ子・訳 出版社:アーティストハウス 発行年:2002 イスラムの因習に縛られ閉塞したシリアの社会を舞台に、性的抑圧に苦しむ男女の姿を描く。 主人公は極端に嗅覚が発達した青年、彼は聖職者である父に結婚を命じ…

素粒子

ミシェル・ウェルベック:著 野崎歓:訳 筑摩書房 2001年9月発行 性欲に振り回されて常に満たされることのない兄と、性欲どころか殆どの欲望に無関心である孤独な天才科学者の弟。二人の人生を年代記風に辿りながら、教養小説的「進歩」と無縁な彼らの(そし…

『フェルマータ』

著者 :ニコルソン・ベイカー著 岸本佐知子訳 出版社:白水社(Uブックス) 発行年:1998 時間を止める能力を持った男が書いた自伝、という枠組みを持つ小説。だが、その能力はほぼ「女の服を脱がせ裸を見ること」のみに用いられ、その自伝もいきおいポルノ…