コレクター蒐集

コレクター蒐集 (海外文学セレクション)
ティボール・フィッシャー:著  野口百合子:訳
東京創元社 
2003年4月発行 
1500円


人格と変身能力を持つ「陶器」の視点から叙述された、女性鑑定家の真実の愛の探求の物語・・・って自分で骨子を書いててそれだけでイヤになってきた(苦笑
まあ、いいいや。。。

 <あらすじ>
主人公の女性骨董品鑑定家ローザが鑑定を依頼された骨董品は高度な知性を有しており彼女にかつての所有者たちの物語を見せるとともにローザの記憶をも逆に探ろうとする。ローザは一見非の打ち所のない女性だが、理想的な男性を求める余りにそれを手に入れることが出来ず、自分は不幸だという思いを募らせて恋愛相談をやっているコラムニストを井戸に監禁して助言を要求する。そんななか、ローザの元にニキという奔放な女性が同居することになり・・・。


知性を持つ陶器の語る挿話(革新的な偉業を達成するのだが、常に他人に一歩先んじられてしまい、結局狂った詩人を蒐集するという趣味に生きがいを見出す女性とか。)は面白いのだが、いかんせん中心となるストーリーが「ブリジット・ジョーンズの日記」か「アリー・マイ・ラブ」かってぐらいのものなんで、どうにも背中が痒くなる。エンディングにしても、なんじゃこりゃあ、って言いたくなるくらいのご都合主義だし。

ようするに、理想の相手を求めるっていうのも、コレクションと同じできりがない、ということなんだろうけど。成功に学ぶよりも上手く失敗することを学ばねばならない、という主張も語られているし。あまり解決にはならない主張ではあるね(笑 
作者も認めているように、それは成功者の思い通りにされてしまう、ということからは逃れ得てはいないから。


あと、翻訳が悪すぎです。原文は言葉遊びに充ちたユーモア小説といった感じなんだろうけど、翻訳がそれを上手い日本語に出来ておらず、ギャグが上滑りしているというような「さむい」小説になってしまっております。私が編集者であったなら、著者にも訳者にも書き直しを命じたと思います。もっと面白くなる余地は幾らでもあるのに、瑕疵が目立ちすぎて読むに耐えない残念な小説ですから。