熊の場所

熊の場所
舞城王太郎:著
講談社 
2002年10月発行 
1600円 P205


熊の場所」「バット男」「ピコーン!」の三篇を収めた短編集。


熊の場所」では猫殺しを噂される同級生をめぐる少年の冒険を通じて恐怖に立ち向かうということが、「バット男」ではバットを持ってうろつきながら常に返り討ちにされる変人の死と一組の恋人の不幸の連鎖を通じて「世界を支配する唯一の真実は強弱という関係」であることへの恐怖が描かれる。

「ピコーン!」は恋人を殺されたヤンキー少女が犯人を探す話なのだが、ストーリーもオチも陳腐で、最初の二篇と較べたら相当に出来が落ちる。見せ場は主人公の少女の冒頭でのムチャっぷりと、恋人の男の異様な死に様くらい。

いずれもミステリー仕立てではあるが、ミステリーである必然性はあまりない。文体も「ピコーン!」の冒頭などを除けば、いかにも舞城的な(暴走するような)それではない。だが「バット男」に描かれる「誰が悪いわけでもない、ただ弱いが故に降りかかる不幸」の描き方などには非常に引き込まれる。