国内文学

みんな元気。

著者:舞城王太郎 舞城王太郎の「みんな元気。」は、「何かを選ぶ」ということの暴力性をはっきりと描き出す。「何かを選ぶ」ということは「選ばれなかった可能性」を殺すということでもあるのだ。だが、舞城は「それでも何かを選ばないことには前に進めない…

『私が語りはじめた彼は』

著者:三浦しをん 激しい感情は書物と同じだ。どれだけ厚くても、いつか終わりがやってくる。僕はもう、激しさをすべて使いきってしまったから、はじまりも終わりもなく続いていくだけなのだ。 (「冷血」より) 「結晶」「残骸」「予言」「水葬」「冷血」「…

『オウバアキル』

そして先人に倣って自らも「呪われた詩人」になることを夢見る。しかし、差し当たってリセに通う平々凡々たる生徒に過ぎない私は、呪いなどとは全く無縁で、常日頃、救いようのない自分の凡庸さを意識すると同時に、不満を漏らす権利は自分にはないのだとも…

『金毘羅』

笙野頼子 集英社 2004年10月 2000円 この小説の末尾には、作者によるこのような断り書きが記されている。 「この小説は異端、或いは反主流の学説を多く根拠にした空想の含まれる作品です。その他の研究所、論文の通りにはなっていませんのでご注意…

『ねむり姫』

「ねむり姫」という澁澤龍彦の短篇がある。十四歳の姿のまま眠り続ける「珠名姫」は、盗賊となった腹違いの兄「つむじ丸」にさらわれ山中に捨てられる。その際、両手首を野犬に食い千切られた姫は、寺院に安置されるものの、やがて手に余るようになった僧侶…

『落窪物語』

『落窪物語』とは、通俗小説の偉大なる古典である。 小島政次郎が述べたように、下級の女房の欲望に応える「大衆小説」なのであり、その通俗性のパターンをより過剰な通俗性をもって裏切るところに『落窪物語』の小説としての巧みさはある。 はっきりいって…

『パンク侍、斬られて候』

著者 :町田康 出版社:マガジンハウス 発行年:2004年 価格 :1600円 <あらすじ> 世界は巨大な条虫の胎内にあると信じ、そこから脱出すべく虚無的な乱行を繰り広げる教団「腹ふり党」。その対策者として超人的剣豪である浪人・掛十之進は黒和藩家老・内藤…

ダンボールボートで海岸

著者名:千頭ひなた 発行年:2004 出版社:集英社 価格 :1300円 <あらすじ> 主人公のアオイは、ただひとりの肉親である母親が男と蒸発したために、大学を休学しフリーターをしながら何とか生活している。そこへ自称アーティストの友人であるハナが転がり…

阿修羅ガール

著者名:舞城王太郎 発行年:2003年 出版社:新潮社 価格 :1400円 <あらすじ> 好きでもない男とホテルに行ったアイコは、顔射されかかってキレ、男を蹴り上げて家に帰る。翌日友人たちに理由も分からずシメられかかったアイコは逆にそのリーダー格の女を…

鱗姫

著者名:嶽本野ばら 発行年:2001年 出版社:小学館 価格 :1200円 <あらすじ> 美しい資産家の令嬢「龍烏楼子」は美に異様に執着するとともに醜形への恐怖に支配されていた。だが彼女には龍烏家の女子に遺伝する奇病「鱗病」という忌まわしい秘密があった…

GOTH

著者 :乙一 出版社:角川書店 発行年:2002年7月 価格 :1500円 人間の暗黒面に興味を持つ主人公の少年と少女が殺人事件に関わるという連作短編集。 去年相当高い評価を受けた本という話だったのだが、うーん、イマイチ。ストーリーテリングの技は上手いと…

自殺サークル

著者 :園子温 出版社:河出書房新社 発行年:2002年 価格 :1000円 <あらすじ> 上野駅での女子高生54人の集団自殺。その少し前、愛知県の片田舎での退屈な日常から抜け出そうと家出した女子高生「さやか」はネット上で知り合った女性「クミコ」と出会いレ…

球形時間

多和田葉子:著 新潮社 2002年6月 171P 1500円 派手な外見ながら優等生のサヤ、同性愛者の不良少年カツオ、その担任の民主的であろうとする教師ソノダ、三人の物語が交互に語られていく。 カツオに異常な敵意を持つ潔癖症のナミコ、太陽について執着する大…

しょっぱいドライブ

大道珠貴:著 文藝春秋 2003年3月 1250円 <あらすじ> 生まれ育った寂れた漁村から出て近隣の小都市でバイト暮らしをする34歳の「私」は、幼い頃から「私」のダメな父と兄に食い物にされているにも関わらず快く援助をしてくれていた「九十九さん」という初…

熊の場所

舞城王太郎:著 講談社 2002年10月発行 1600円 P205 「熊の場所」「バット男」「ピコーン!」の三篇を収めた短編集。 「熊の場所」では猫殺しを噂される同級生をめぐる少年の冒険を通じて恐怖に立ち向かうということが、「バット男」ではバットを持ってうろ…

パークライフ

著者 :吉田修一 出版社:文藝春秋 発行年:2002年 価格 :1300円 <あらすじ> 「私」は地下鉄の中で、つい知り合いのいない背後に話し掛けてしまうが、その言葉に一人の女性が返事をして彼の恥ずかしさを救う。その後、彼は日頃「なにもしない」時間を過ご…

『半所有者』

著者 :河野多恵子 出版社:新潮社 発行年:2001年11月 その内容よりも44ページで1000円というコストパフォーマンスの悪さによって注目を浴びた問題作(爆)。あらすじといっても、「妻に先立たれた初老の夫が、妻の死体と性交する」というだけですべて表さ…

ニッポニアニッポン

阿部和重:著 新潮社 2001年発行 <あらすじ> 中学時代の同級生にストーカー行為を働いたことにより、実家を追われ東京のアパートに一人暮らししている18歳の少年。部屋にこもり日の多くをネットに費やす彼は、次第に「佐渡島のトキを殺して人間の書いたシ…

シルエット

島本理生:著 新潮社 2001年発行 (現在ハードカバー版は絶版。右は文庫版) <あらすじ> 高校2年の「わたし」は、以前同級生の「冠くん」と付き合っていた。彼は、父親に刺されて寝たきりとなった母親と二人暮しをしていたのだが、家庭崩壊の原因となった…

インストール

著者 :綿矢りさ 出版社:河出書房新社 発行年:2001年 <あらすじ> 女子高生の「わたし」は、何者にもなれない自分への焦りから、部屋の家財一式をゴミ捨て場に捨てて、学校へ行くこともやめてしまう。ゴミを捨てているときに一人の少年と出会い、彼は彼女…